電気化学的な脱塩素化論文発表にあたり

Lingyu Meng, Naoko Yoshida, Zhiling Li. Soil microorganisms facilitated the electrode-driven trichloroethene dechlorination to ethene by Dehalococcoides species in a bioelectrochemical system.

Env.R.,209, June 2022, 112801. https://doi.org/10.1016/j.envres.2022.112801

今回発表された論文は、本研究室で分離したDehalococcoides NIT01株(浅井ら、Env. R., 2021) を用いた電気化学的な脱塩素化反応において、NIT01と電極間の電子伝達を土壌中に棲息する微生物(Desulfosporosinus属細菌)が担う可能性を示した論文です。さらに、カソードバイオフィルム及び培養液中に存在する酸還元物質がNIT01と電極間の電子伝達に寄与する可能性を提示した。本研究は従来のエネルギー源である水素供給を介さず、電極をエネルギー源とした電気化学セルにおいてDehalococcoidesに共役する微生物の同定がサイエンス面での新規性が示されつつ、Dehalococcoidesを用いた電気化学的な脱塩素化の応用に関する知見の拡充にも繋がると考えます。今後、電子伝達メディエーターの同定を含め電子伝達機構を突き止めていきたいと考えています。

この論文は私が学位取得後に研究分野を切り替えて初の論文であり、吉田先生が長年にわたって脱ハロの研究がされた経験に基づいた発想で実験デザインをした。論文の基礎データを取るために必要な実験スキルを研究室の技術補佐員の鈴木さんと秋田さんが丁寧に教えていただき、そして蘇さんが一部分のサンプルの分析を協力していただいたからこそ論文発表ができた。論文投稿からアクセプトされるまでに7カ月間がかかりまして吉田先生や国際共同研究先のハルビン工科大学の李先生からたくさんのご助言を頂いたお陰で、責任著者の役割を果たせ最初から最後までにやり遂げることができ、大変勉強になりました。ここで吉田先生をはじめご協力を頂いた皆様に御礼を申し上げます。最後にこれまでに蓄積されたノウハウを研究室に還元できたらと思いつつ、研究を頑張りたいと思います。引き続きよろしくお願い致します。

孟令宇 2022年2月2日

国際学会[Materials Research Meeting 2021]に孟特任助教、謝研究員が発表します

MRM2021, Dec 13-17, 2021

Meng L., Xie, L., Yoshida, N., “Carbon physiochemistry differentiates electrogenic metabolism of Geobacterbremensiseither chemotaxis or biofilm formation”, Poster presentation.

Xie, L., Yoshida, N., Meng, L., “Isolation and polyphasic characterization of ‘Desulfuromonas versatilis’ sp. nov., an electrogenic bacteria capable of versatile metabolism isolated from a graphene oxide reducing enrichment culture”, Poster presentation.

MFCスケールアップ論文発表の裏話

Mari Sugioka, NaokoYoshida, TaikiYamane, Yuriko Kakihana, Mitsuru Higa, Takahiro Matsumura, Mitsuhiro Sakoda, and Kazuki Iida

Long-term evaluation of an air-cathode microbial fuel cell with an anion exchange membrane in a 226L wastewater treatment reactor

Environmental Research, 2021, 112416.

昨年3月に修士課程を修了された杉岡さんがメインで取り組んでくれたMFCスケールアップ論文が発表されました(まだpreproofですが公開されてます.).杉岡さんが就職されてからも、データを足して書き直して諸々頑張りましたが、力至らず. 3つの雑誌にチャレンジしてリジェクトされましたが, 最終的にEnviron Resでは軽微な修正で受理されました. MFC論文では、あり得ない実験設定であっても、とにかくチャンピオンパフォーマンスを示さないと載らないのかもしれませんね. 山の高さを再認識しました. とはいえ、下水の微生物燃料電池研究で堅持してきた現実路線をぶらすことなく、卒業・修了された皆さんの成果を発展できるよう取り組んでいきます.